朝に読むなら、立派な決意より、ゆうべ何を食べたかのほうがおもしろい気がするのではないでしょうか。
ふだんのできごとを記録して数か月後に読み返す実験でも、読み返したときのおもしろさは本人の予想を上回りました。ありふれたできごとほど、その差は大きかったそうです。一晩と数か月では違いますが、「こんなこと書いてもな」くらいのことを書いてみるのはいいかもしれません。
何を書けば良いか迷ってしまう方のために、型を3つ作りました。混ぜてもかまいません。
1. 指令書
朝にやることを1つだけ書きます。
この手紙を読み終えたら、カーテンを開ける。それだけでいい。
2. ツンデレ
厳しく書いてもいいです。最後の1行だけ、味方をしてあげます。
どうせ「眠い」って言うんだろ。…でも、起きられる。きのうもそうだった。
3. 予告編
ゆうべの自分しか知らないことを書きます。「きみ」と呼ぶと書きやすいです。
きみ、冷凍庫のアイス、一個だけ残しといた。きみのぶんだよ。
どれもしっくりこない夜は、「がんばれ」だけでも大丈夫です。
友だちに送るなら
同じ型で書けます。相手のきょうの予定を知っていたら、入れてみてください。
きょうの発表、この手紙を読んだら水を飲んで。応援してるよ。
照れくさいかもしれませんが、感謝の手紙の実験では、受け取った人の喜びは書いた人の予想より大きく、気まずさは予想より小さいものでした。
1週間、順番に試す
1日ごとに3つの型を順番に書いて、朝に読んだら「味方だった」「敵だった」とひとことつけてみてください。自分に合う型が見えてくるかもしれません。
型を作るときに読んだ研究
3つの型は、近いテーマの研究を読みながら考えました。朝の手紙そのものの研究ではないので、参考程度に読んでください。
指令書と「読み終えたら」
「もし〜なら〜する」と決めておく方法は「実行意図」と呼ばれます。94件の検証をまとめた研究では、目標の達成に中〜大の効果が見られました。
ただ「起きたら」だと、起きられない朝には使えません。手紙を読むところまでは来ているので、指令書では「読み終えたら」を合図にしました。ここは私たちの思いつきで、試した研究はありません。
ツンデレと厳しい言葉
厳しい言葉が効くという研究は見つかりませんでした。失敗のあとに自分を思いやるよう促された人は、次のテストの勉強時間が長くなった、という実験はあります。厳しい言葉と比べた実験ではないので、優しいほうがいいとまでは言えません。先延ばしをしやすい人は自分への思いやりが低い傾向がある、という報告もありますが、これは相関です。
93人の自転車の実験(修士論文)では、全体の成績に差はなく、終盤だけ、否定に励ましで言い返した人が、否定で終わった人を上回りました。運動中の独り言の実験です。ツンデレの最後の1行は、これを参考にしました。
予告編と「きみ」
未来の自分のための決定は他人のための決定に似ている、という実験があります。まずい液体をどれだけ飲むかを決める実験などです。夜に平気で「5時に起きろ」と書けるのも、そのせいかもしれません。
自分を名前や「きみ」で呼んで考えると、自分を少し離して見られて、緊張する場面を乗り切りやすい、という研究もあります。頭の中で語りかける実験でした。
未来の自分を身近に感じると、行動が変わることもあるようです。大学生が20年後の自分か3か月後の自分に手紙を書いた実験では、20年後宛ての人のほうが、その後の日々に運動する確率が高くなりました。遠い自分を思い描くことで、未来の自分とのつながりが強まったのだと考えられています。予告編で「ゆうべの自分しか知らないこと」を書くのも、朝の自分とのつながりを作るためです。
友だちの手紙
自分の手紙と友だちの手紙を比べた研究は見つかりませんでした。近いものでは、5〜12歳の子ども176人で、火災報知器の音と録音した母親の声を比べた実験があります。起きた子は、音で約53%、母親の声で約86〜91%でした。子どもの実験で、文面ではなく声の話です。
書く側については、アメリカの高校生約2,000人が、年下の生徒へ助言と励ましの手紙を書いた実験があります。8分ほどの活動で、書いた生徒の成績がわずかに上がりました。次の学期には薄れた科目もありました。
参考にした研究
- Zhang, T., et al. (2014). A "present" for the future: The unexpected value of rediscovery. Psychological Science.
- Gollwitzer, P. M., & Sheeran, P. (2006). Implementation intentions and goal achievement: A meta-analysis of effects and processes.
- DeWolfe, C. (2016). Is negative self-talk all that bad?(修士論文)
- Breines, J. G., & Chen, S. (2012). Self-compassion increases self-improvement motivation.
- Sirois, F. M. (2014). Procrastination and stress: Exploring the role of self-compassion.
- Pronin, E., et al. (2008). Doing unto future selves as you would do unto others.
- Kross, E., et al. (2014). Self-talk as a regulatory mechanism: How you do it matters.
- Rutchick, A. M., et al. (2018). Future self-continuity is associated with improved health and increases exercise behavior.
- Kumar, A., & Epley, N. (2018). Undervaluing gratitude.(リンク先は解説記事)
- Smith, G. A., et al. (2018). Effectiveness of a voice smoke alarm using the child's name for sleeping children.(リンク先は解説記事)
- Eskreis-Winkler, L., et al. (2019). A large-scale field experiment shows giving advice improves academic outcomes for the advisor.
